キャンセルカルチャーとは
キャンセルカルチャーは、SNSの普及とともに広がった比較的新しい言葉です。ここでは、言葉の意味と、キャンセルが具体的にどのような形で起こるのか、混同されやすい言葉との違いを整理します。
キャンセルカルチャーの意味と定義
キャンセルカルチャー(cancel culture)とは、個人や企業の発言・行動が問題視された際に、SNSなどを通じて集団で批判し、その対象への支持や取引を取り下げるよう求める動き、またはそうした風潮を指す言葉です。英語の「cancel(取り消す)」と「culture(文化)」を組み合わせた造語で、問題とされた人物や企業を、社会的な場から排除するという意味合いで使われます。
米国の辞書出版社メリアム・ウェブスターは、問題のある言動や意見を理由に公人への支持を取り下げることと説明し、不買や作品の宣伝拒否なども含まれるとしています。また、オーストラリアのマッコーリー辞典は、2019年の「今年の言葉」にこの語を選び、社会的に容認されない言動をしたとされる公人に対して、出演の取り消しや楽曲の放送禁止、SNSからの排除などを通じて支持の撤回を求める、共同体の態度と定義しています。
キャンセルカルチャーには、主に次のような特徴があります。
- ・現在の言動だけでなく、過去の発言や投稿、作品が掘り起こされて問題視されることが多い
- ・法的な判断を経ずに、SNS上の批判や世論を起点として社会的な制裁が進む
- ・批判が当事者本人にとどまらず、所属先、起用企業、スポンサー、取引先へと波及する

図:キャンセルカルチャーが発展する4つの段階
参考:What It Means to Get ‘Canceled’(Merriam-Webster)
https://www.merriam-webster.com/wordplay/cancel-culture-words-were-watching
参考:Word of the Year 2019(Macquarie Dictionary)
https://www.macquariedictionary.com.au/word-of-the-year/word-of-the-year-2019/
キャンセルの代表的なパターン
キャンセルカルチャーでは、SNS上の批判が、実際の購買行動や契約、人事にまで及びます。よく見られる代表的なパターンは次のとおりです。
- ・不買運動(ボイコット):商品やサービスの購入をやめるよう呼びかけ、ハッシュタグなどで拡散する
- ・広告、CMの差し止め:問題視された企業や番組への広告出稿を停止するよう、スポンサー企業に求める
- ・起用、出演の取り消し:タレントやインフルエンサーの広告起用、番組出演、講演登壇などの中止を求める
- ・契約、取引の見直し:取引先企業に対して、問題視された企業や個人との契約解除を求める
- ・辞任、解任の要求:経営者や担当者の辞任、役職からの解任を求める
- ・作品、受賞の取り消し:作品の販売・配信停止や、賞・名誉の剥奪を求める
企業は、自社の言動が直接批判される場合だけでなく、起用したタレントや取引先が批判の対象となり、「起用の責任」や「取引を続けることの是非」を問われる形で巻き込まれることも少なくありません。
コールアウト・SNS炎上との違い
キャンセルカルチャーと混同されやすい言葉に、「コールアウトカルチャー」と「SNS炎上」があります。
コールアウトカルチャー(call-out culture)とは、差別的・不適切とみなされた言動を、SNSなどで公に指摘し批判する風潮のことです。マッコーリー辞典では、キャンセルカルチャーの別称の一つとして挙げられています。一般的には、コールアウトが「問題の指摘」にとどまるのに対して、キャンセルは支持の撤回や排除まで求める点で区別されます。
SNS炎上とは、SNSにおいて、批判や誹謗中傷が集中する状態のことです。法令上の明確な定義はありませんが、総務省は「炎上」について、「ウェブ上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態」と説明しています。
炎上が批判の集中する「状態」を指すのに対し、キャンセルカルチャーは、その批判が不買、降板、契約解除といった「排除の行動」にまで発展する動きや風潮を指します。炎上はキャンセルの入り口となることが多いものの、すべての炎上がキャンセルに至るわけではありません。
| 項目 | コールアウトカルチャー | SNS炎上 | キャンセルカルチャー |
|---|---|---|---|
| 意味 | 不適切な言動を公に指摘・批判する風潮 | 批判や誹謗中傷が集中する状態 | 支持や取引の撤回を集団で求める動き・風潮 |
| 主な帰結 | 問題の可視化、是正の要求 | 批判の一時的な集中(沈静化する場合も多い) | 不買、降板、契約解除、辞任など |
| 対象となる言動 | 現在の言動が中心 | 現在の言動が中心 | 過去の言動も対象になりやすい |
| 影響の範囲 | 発言者本人 | 発言者本人、所属先 | 本人に加え、起用企業、スポンサー、取引先 |
参考:第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にある Society5.0(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd101300.html
関連コラム:SNS炎上とは|事例から読み解く原因と対策
https://clad.inc/socialrisk/column/250615
キャンセルカルチャーの歴史
キャンセルカルチャーという言葉は、米国のスラングを起源とし、SNSの普及と社会運動の広がりを背景に、2010年代後半から一般的に使われるようになりました。その後、言論の自由をめぐる論争を経て、日本を含む各国に広がっています。

図:キャンセルカルチャーの主な出来事(2017年〜2025年)
スラングから生まれた言葉
米国の調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、「cancel」は1980年代の楽曲の中で、恋人と別れることを意味する比較的マイナーなスラングが由来とされています。その後映画やテレビで引用されて、SNS上で広まった背景があります。また、メリアム・ウェブスターは、この語がTwitter(現X)上の黒人ユーザーによってハッシュタグとして使われ始めたと説明しています。
当初は、好ましくない相手との関係を断つという軽い意味合いでしたが、著名人の問題行動が明るみに出るたびに「キャンセル」を呼びかける投稿が増え、公人への支持を取り下げる行為を指す言葉へと変化しました。
参考:Americans and ‘Cancel Culture’: Where Some See Calls for Accountability, Others See Censorship, Punishment(Pew Research Center)
https://www.pewresearch.org/internet/2021/05/19/americans-and-cancel-culture-where-some-see-calls-for-accountability-others-see-censorship-punishment/
#MeToo運動で社会現象に
キャンセルカルチャーが社会的に注目される契機となったのが、2017年に広がった「#MeToo」運動です。米国の映画界の有力者によるセクシュアルハラスメントが報道されたことをきっかけに、被害を受けた人々がハッシュタグを付けて体験を共有し、告発を受けた著名人の降板や解任が相次ぎました(詳細は「海外のキャンセルカルチャー事例」で解説します)。
マッコーリー辞典は、2018年の「今年の言葉」に「Me Too」を、翌2019年に「cancel culture」を選んでおり、キャンセルカルチャーの由来や使われ方は#MeToo運動と結びつけて説明されています。社会的地位の高い人物に責任を問う声がSNSを通じて可視化されたことで、キャンセルは一部のネットスラングから、社会現象を表す言葉へと変わりました。
参考:Macquarie’s word of the year calls out bad behaviour(The New Daily)
https://thenewdaily.com.au/life/education/2019/12/02/cancel-culture-word-year/
言論の自由をめぐる論争と日本への波及
2019年以降、キャンセルカルチャーは賛否が分かれる社会的な論点となりました。2019年10月には、米国のオバマ元大統領が自身の財団のイベントで、SNS上で他者の誤りを指摘して満足するだけの行為は、社会を変える活動とはいえないとの趣旨を述べ、行き過ぎたコールアウトへの懸念を示しました。2020年7月には、米誌ハーパーズに、作家や学者ら150人以上が署名した公開書簡が掲載され、異なる意見への不寛容や、公の場で辱めを与える風潮が広がっていると問題提起しました。一方で、この書簡に対しては、社会的に弱い立場にある人々の異議申し立てを封じる議論につながるとの反論も出され、論争が起きています。
米国では、2020年9月時点で成人の44%が「キャンセルカルチャー」という言葉を少なくともある程度聞いたことがあると回答しています。言葉の意味については、「他者に説明責任を問う行動」と捉える回答が最も多かった一方、「検閲の一種」(14%)や「他者を傷つけるための攻撃」(12%)と捉える回答もあり、評価は大きく分かれています。
アメリカ政治を専門とする上智大学の前嶋和弘教授は、この言葉が米国の保守層に広がった背景に、保守層とリベラル層の分断が深まる「政治的分極化」があると解説しています。こうした米国発の議論は、2020年前後から各国に広まり、日本でも、過去の言動の掘り起こしによる辞任や、企業の広告起用の見直しなどをキャンセルカルチャーとして論じる機会が増えています。
参考:Obama calls out call-out culture(CBS News)
https://www.cbsnews.com/news/president-obama-calls-out-woke-culture-says-not-bringing-about-change-2019-10-30/
参考:A Letter on Justice and Open Debate(Harper’s Magazine)
https://harpers.org/a-letter-on-justice-and-open-debate/
参考:キャンセルカルチャー(日本大百科全書〔ニッポニカ〕/コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC-2879219
参考:『「キャンセル・カルチャー」パニック』書評(artscape)
https://artscape.jp/article/64973/
キャンセルカルチャーが起こる原因
キャンセルカルチャーは、社会の価値観の変化、人間の心理、SNSの仕組みという3つの要素が重なって発生し、拡大します。
社会的背景:価値観と人権意識の変化
キャンセルカルチャーの土台には、社会全体の価値観の変化があります。ジェンダー、人種、性的指向、障がいなど、多様性への意識が高まったことで、以前は問題視されなかった表現や言動が批判されるようになりました。「一昔前までは許容されていた」という認識や、「ちょっとくらい平気」という軽率な判断は、現代では通用しません。
企業に対する人権尊重の要請も強まっています。日本政府は2022年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定し、日本で事業活動を行う企業に対して、自社だけでなく取引先を含むサプライチェーン全体での人権尊重の取り組みを求めています。このため、取引先や起用先の人権問題が明らかになった場合、企業は「その相手と取引を続けるのか」という判断と説明を求められるようになりました。
さらに、SNSの投稿やWeb記事、雑誌のアーカイブなどがデジタルデータとして検索可能な形で残ることで、数年前、数十年前の言動であっても掘り起こされやすくなっています。
参考:日本政府は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220913003/20220913003.html
心理的背景:正義感と同調圧力
キャンセルカルチャーへの参加には、次のような心理が影響していると考えられています。
- ・正義感と公正世界信念:
社会心理学では、世界は公正であるべきだとする信念を「公正世界信念」と呼びます。この信念は社会の秩序を支える一方で、不道徳とみなされたものへのバッシングの原因にもなると指摘されています。 - ・道徳的な優位性の表明:
批判に加わることで、自らの正しさや価値観を周囲に示したいという動機が働く場合があります。 - ・同調と集団極性化:
集団による議論の後、個々の意見が特定方向に集中および先鋭化する「集団極性化」が起こりやすくなります。周囲の批判に同調する形で、意見がより強い方向へ傾いていきます。 - ・少数の強い声:
『ネット炎上の研究』(田中辰雄・山口真一著)は、過去1年以内に炎上に書き込んだ経験のある人はネット利用者の5%程度にとどまるとの推計を示しています。実際の参加者が少数でも、繰り返しの投稿によって大きな世論のように見える点に注意が必要です。
参考:SNSで”必要以上に”叩いてしまう人たちの危うさ(ASCII.jp)
https://ascii.jp/elem/000/004/157/4157666/2/
参考:インターネット上での情報流通の特徴と言われているもの(総務省 令和元年版 情報通信白書)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd114210.html
SNSのアルゴリズムによる増幅
総務省の情報通信白書によると、プラットフォーム事業者は利用者のクリック履歴などを分析し、関心を持ちそうな情報を優先的に表示しています。その結果、自分と似た意見ばかりに触れる「フィルターバブル」や、似た意見が反響して増幅される「エコーチェンバー」と呼ばれる状態が生じやすいとされています。
怒りや道徳的な感情を含む投稿は、特に拡散しやすいことも研究で示されています。米ニューヨーク大学などの研究チームが約56万件の投稿を分析した2017年の論文では、道徳的・感情的な語が1語増えるごとに、投稿の拡散が約20%増加していました。また、米イェール大学の研究チームによる2021年の論文では、怒りを表明した投稿に多くの「いいね」やリポストが集まると、その利用者はその後さらに怒りを表明しやすくなる傾向が確認されています。
反応が多い投稿ほど表示されやすく、反応を得た人ほど批判を強めやすくなります。この循環が、キャンセルカルチャーが短期間で拡大する要因の一つです。
参考:フィルターバブル、エコーチェンバー(総務省 令和5年版 情報通信白書)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/nd123120.html
参考:Emotion shapes the diffusion of moralized content in social networks(PNAS)
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1618923114
参考:How social learning amplifies moral outrage expression in online social networks(Science Advances)
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abe5641
キャンセルカルチャーが企業に与える影響
キャンセルカルチャーの影響は、SNS上の評判にとどまりません。社内の組織運営、売上や取引関係、公式SNSアカウントの運用にまで及び、影響が長期化することもあります。
社内への影響
- ・問い合わせ、抗議への対応負荷:
広報、カスタマーサポート、店舗などに問い合わせや抗議が集中し、通常業務が圧迫されます。 - ・従業員の安全への懸念:
店舗や窓口の従業員が、来店者からの威圧的な言動や脅迫にさらされるケースがあります。 - ・士気の低下と離職:
自社への批判が続くことで、従業員のモチベーションや帰属意識が低下し、離職につながる場合があります。 - ・採用への影響:
企業名で検索した際にネガティブな情報が表示されることで、応募者が減少するおそれがあります。 - ・発言の萎縮:
社内で意見を述べることをためらう雰囲気が生まれやすくなります。米ハーバード大学のピッパ・ノリス氏による政治学者約2,500人への調査では、自分の価値観が周囲と一致していないと感じる人ほど、意見の表明を控える傾向があることが示されています。
参考:Cancel Culture: Myth or Reality?(Political Studies)
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00323217211037023
経営・取引への影響
- ・売上の減少:不買運動によって、商品やサービスの売上が減少します。海外では、不買運動が四半期決算に表れた事例もあります。
- ・広告、スポンサー契約の停止:広告主によるCMの差し止めや、スポンサー契約の見直しが起こります。
- ・取引先からの契約見直し:取引先が人権尊重の観点から取引の継続を見直し、契約の不更新や解除に至る場合があります。
- ・株主、投資家への説明責任:ガバナンスの不備を指摘され、株主や投資家から経営体制の説明や見直しを求められることがあります。
- ・ネガティブ情報の定着:検索結果や検索候補(サジェスト)にネガティブな情報が残り、収束後もブランドイメージに影響し続けることがあります。
公式SNSアカウントへの影響
企業の公式SNSアカウントは、キャンセルカルチャーが起きた際に批判の窓口となりやすい場所です。
- ・コメント欄、リプライへの批判の集中:問題と無関係な通常の投稿にも、批判や不買を呼びかけるコメントが書き込まれます。
- ・過去の投稿の掘り起こし:過去の投稿が引用やスクリーンショットで再拡散され、新たな批判の材料とされることがあります。
- ・削除による二次炎上:削除した投稿もスクリーンショットで保存・拡散されやすく、「証拠隠滅」とみなされて二次炎上を招くリスクがあります。
- ・発信の停止による機会損失:運用を一時停止せざるを得なくなり、平時の顧客コミュニケーションや販促の機会が失われます。
- ・なりすましアカウントの出現:騒動に便乗して公式アカウントを装うなりすましアカウントが現れ、偽の声明などが拡散されるおそれもあります。
キャンセルカルチャーに良い面はあるか
キャンセルカルチャーは否定的な文脈で語られることが多い一方で、社会的な意義を認める見方もあります。ここでは、肯定的な側面と弊害の両方を整理します。
社会課題を可視化する役割
キャンセルカルチャーには、これまで声を上げにくかった被害者や少数者の声を社会に届け、権力のある人物や組織に説明責任を求める側面があります。#MeToo運動は、長年表面化しなかったハラスメントの問題を明るみに出し、業界の慣行を見直す契機となりました。
前述のピュー・リサーチ・センターの調査でも、SNS上で他者の言動を指摘する行為について、米国の回答者は「不当に罰する」よりも「説明責任を問う」ことにつながる可能性が高いと考える傾向にありました。また、日本の研究者の間では、「キャンセルカルチャー」という呼び方そのものが、少数者による正当な異議申し立てを「行き過ぎ」として抑え込む方向に働くことへの懸念も示されています。
企業にとっても、外部からの批判は、自社の表現や社内体制の課題に気づく契機となり得ます。
参考:「キャンセル・カルチャーと言うべきでない」論をめぐる論考(現代ビジネス)
https://gendai.media/articles/-/98396
行き過ぎによる弊害
一方で、キャンセルカルチャーには次のような弊害も指摘されています。
- ・事実確認前の拡散:真偽が確認される前に批判が広がり、誤情報によって無関係の人や企業が攻撃されることがあります。
- ・文脈の切り取り:発言の一部だけが切り取られ、本来の意図とは異なる形で批判されることがあります。
- ・過去の言動への現在の基準の適用:数十年前の言動が、現在の価値観に照らして裁かれることがあります。
- ・更生の機会の喪失:一度の批判で社会的な地位を失い、謝罪や改善の機会が十分に与えられないことがあります。
- ・言論の萎縮:批判を恐れて、多様な意見の表明が控えられるようになります。
- ・関係者への波及:問題に直接関与していない従業員や所属タレント、取引先までが不利益を受けることがあります。
日本のキャンセルカルチャー事例
日本でも、過去の言動の掘り起こしや、問題発覚後の組織の対応をきっかけに、辞任や広告起用の見直し、スポンサー離れへと発展した事例があります。ここでは、企業のリスク管理の観点から参考になる3つの事例を紹介します。
国際大会の演出担当者が辞任(2021年)
2021年7月、東京2020オリンピック開会式の楽曲制作担当として発表されたミュージシャンが、1990年代の雑誌インタビューで同級生へのいじめを語っていたことがSNS上で拡散し、批判が集中しました。本人は謝罪文を公表しましたが批判は収まらず、開会式の4日前に辞任を表明しました。さらに開会式の前日には、開閉会式の演出担当者が、過去のコントの内容を理由に解任されています。
過去の発言や作品がデジタル上に残り、起用の発表を機に掘り起こされた典型的な事例です。当事者だけでなく、起用した側の事前確認も問われました。
▼リスクに備える企業が取るべき対策
- タレントやクリエイターの起用時に、過去の発言や作品を含めた事前確認を行う
- 起用発表後に批判が起きた場合の判断基準と、判断者をあらかじめ決めておく
参考:東京五輪開会式の作曲担当者の辞任に関する記事(CNN.co.jp、2021年7月19日)
https://www.cnn.co.jp/showbiz/35174165.html
参考:東京五輪開催決定から開会式までの経緯をまとめた記事(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/tokyo-olympics-2013-2021
芸能事務所タレントの起用見直し(2023年)
2023年、大手芸能事務所の創業者による性加害問題が社会問題化しました。同年9月7日の記者会見で事務所側が性加害を認めた後、所属タレントを広告に起用していた企業の間で、起用の見直しが相次ぎました。帝国データバンクの調査によると、2023年以降に同事務所のタレントを広告や販促物で起用した上場企業65社のうち、9月20日時点で約半数の32社が起用の見直しを表明しています。見直しの理由としては、人権侵害を容認しないことが挙げられました。
タレント本人の言動ではなく、所属事務所の人権問題への対応が問われ、起用企業にも「取引を続けること」への説明責任が生じた点が特徴です。見直しを表明した企業の海外売上比率は平均で3割を超えており、国内外で人権尊重を求める動きが、企業の判断に影響したとみられています。
▼リスクに備える企業が取るべき対策
- 取引先や起用先の人権リスクを確認する体制(人権デューディリジェンス)を整える
- 起用の継続・見直しの判断基準と、社外への説明方針を事前に定めておく
参考:大手芸能事務所タレントのCM起用見直しに関する記事(nippon.com)
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01794/
参考:上場企業の起用見直しに関する帝国データバンク調査の報道(時事通信、2023年9月21日)
https://www.sbbit.jp/article/refers/123417
テレビ局からのスポンサー離れ(2025年)
2025年1月、在京の大手テレビ局をめぐり、出演タレントと女性とのトラブルへの社員の関与が報じられました。同局は1月17日に記者会見を開きましたが、映像撮影を認めないなど閉鎖的な形式だったことに批判が集まり、SNS上でも炎上しました。会見直後から大手スポンサーがCMの差し止めに動き、CMを見合わせた企業は1月21日時点で75社にのぼりました。同局はその後、第三者委員会の設置と、オープンな形式での再会見の開催を決めています。
問題の発覚から8カ月が経過した2025年9月時点でも、CM出稿量は以前の8割程度、実質的な単価は6〜7割の水準にとどまるとの分析があり、スポンサーの信頼回復には長い時間を要しています。
問題そのものに加えて、発生後の会見や説明の進め方が批判を広げ、取引先である広告主の離反を招いた事例です。
▼リスクに備える企業が取るべき対策
- 会見や声明では透明性を重視し、閉鎖的な形式を避ける
- 第三者委員会の設置など、調査の独立性を外部から確認できる形で示す
- 広告主や取引先への個別説明の体制を整えておく
参考:在京テレビ局の第三者委員会設置とCM差し止めに関する記事(Business Insider Japan、2025年1月23日)
https://www.businessinsider.jp/article/fujihd-establish-a-third-party-committee/?page=2
参考:在京テレビ局のCM出稿の回復状況に関する記事(プレジデントオンライン)
https://president.jp/articles/-/107000
海外のキャンセルカルチャー事例
キャンセルカルチャーの発祥とされる米国では、個人だけでなく大手企業のブランドが不買運動の対象となり、業績に影響が出た事例が報告されています。批判はリベラル・保守のどちらの立場からも起こり得る点も、海外事例から読み取れる特徴です。
#MeTooと米映画界の告発(2017年)
2017年10月、米国の新聞が、米映画界の有力プロデューサーによる長年のセクシュアルハラスメント疑惑を報じました。この報道をきっかけに、被害を訴える声が「#MeToo」のハッシュタグとともにSNS上で世界的に広がり、映画、メディア、政治などの分野で、告発された著名人の降板や解任、作品の公開中止が相次ぎました。
告発された本人に加えて、問題を把握しながら対応しなかったとされる組織の責任も問われました。ハラスメントを放置する組織風土そのものが、キャンセルの対象となり得ることを示した事例です。
▼リスクに備える企業が取るべき対策
- ハラスメントの相談窓口を整備し、通報者が不利益を受けない仕組みを設ける
- 経営層や有力者が関与する問題でも、調査と処分を適正に行う体制を整える
参考:米映画界の有力プロデューサーのハラスメント疑惑を報じた記事(The New York Times、2017年10月5日)
https://www.nytimes.com/2017/10/05/us/harvey-weinstein-harassment-allegations.html
米大手ビールブランドの不買運動(2023年)
2023年4月、米国の大手ビールブランドが、トランスジェンダーのインフルエンサーとSNS上でコラボレーションを行ったことをきっかけに、保守層を中心とする不買運動が起こりました。著名人による不買の呼びかけも拡散し、同ブランドは長年守ってきた米国内の販売首位の座を失いました。親会社の2023年4〜6月期決算では、米国の売上高が前年同期比10.5%減少し、同社は主な要因として同ブランドの販売数量の減少を挙げています。
マーケティング施策が想定外の層から強い反発を受けた事例です。批判を受けた後の企業の姿勢が一貫しないと、支持層と批判層の双方から不信を招くことも示しています。
▼リスクに備える企業が取るべき対策
- キャンペーンの企画段階で、多様な立場からの受け止め方を検証する
- 批判を受けた場合の基本方針(説明する内容、変えない価値観)を事前に整理しておく
参考:米大手ビールブランドの不買運動と親会社の決算に関する記事(Fortune、2023年8月4日)
https://fortune.com/2023/08/04/bud-light-parent-ab-inbev-sales-plunge-boycott/
参考:米大手ビールブランドの不買運動と販売首位の交代に関する記事(Marketing Brew、2023年8月4日)
https://www.marketingbrew.com/stories/2023/08/04/after-bud-light-boycott-ab-inbev-reports-10-5-us-revenue-nosedive-in-q2
米大手小売チェーンの売上減少(2023年)
2023年5月、米国の大手小売チェーンが店頭で展開したLGBTQ+関連のプライド月間商品に対し、SNS上で批判と不買の呼びかけが広がりました。店舗の従業員が威圧的な行為にさらされたことも報じられ、同社は一部の商品を撤去しました。同社の2023年5〜7月期決算では、既存店ベースの売上高が5.4%減少し、約6年ぶりの減収となりました。同社は年間の利益見通しを引き下げ、経営陣はプライド関連商品への強い反発が売上に影響したことを認めています。
従業員の安全確保が危機対応の重要な論点となった事例です。また、商品の撤去という対応がLGBTQ+を支持する人々からの批判も招き、一方の批判に応じた対応が、別の立場からの新たな批判を生むことも示しています。
▼リスクに備える企業が取るべき対策
- 店舗や窓口の従業員を守るための安全対策と、エスカレーションの手順を定めておく
- 対応方針を変更する場合は、その理由と自社の価値観をあわせて説明する
参考:米大手小売チェーンの決算とプライド商品への反発に関する記事(NBC News)
https://www.nbcnews.com/business/corporations/target-q2-2023-sales-inflation-pride-month-shopper-backlash-rcna100187
企業がキャンセルカルチャーに対処すべき理由
キャンセルカルチャーは、著名人や一部の大企業だけの問題ではありません。企業が平時から対処を考えておくべき理由は、主に次の3つです。
どの企業も当事者になり得る
社会の価値観は変化し続けており、過去には問題とされなかった広告表現や公式SNSの投稿、経営者の発言が、ある時点で批判の対象となることがあります。社員や役員の個人アカウントでの発言が、企業名とともに拡散されることもあります。業種や規模、BtoB・BtoCを問いません。
取引先・起用者からの巻き込まれ
自社に直接の落ち度がなくても、起用したタレントやインフルエンサー、取引先の問題によって、「起用・取引を続けるのか」という判断と説明を求められることがあります。反対に、自社の問題によって取引先が契約を見直す側に回ることもあり、企業同士の取引関係そのものがキャンセルの経路となっています。
対応次第で被害の規模が変わる
キャンセルカルチャーは、最初の批判よりも、その後の企業の対応によって拡大するケースが少なくありません。日本の事例で見たとおり、閉鎖的な会見や不十分な説明が、スポンサー離れを加速させることがあります。迅速な初動対応ができるかどうかで、その後の被害は大きく変わります。そのため、平時の備えが欠かせません。
キャンセルカルチャーを未然に防ぐ備え
キャンセルカルチャーの発生を完全にコントロールすることはできません。しかし、リスクを把握して起こりにくくする体制と、起きた場合の被害を最小限に抑える体制は、平時から整えておくことができます。
完全に防ぐことはできるのか
社会の価値観の変化や、取引先・起用者など第三者に起因する問題、過去の言動の掘り起こしなどを考えると、キャンセルカルチャーのリスクをゼロにすることはできません。SNS上で世論を味方につけた理不尽なクレームが発生した場合、それを完全に鎮火させる「唯一の正解」はありません。
重要なのは、「炎上してから火を消す」ことよりも「発生させないための予防措置」を徹底し、万が一発生した際には「被害を最小限に抑える初動対応」を行うことです。
また、平時から「常に誠実で、誤解を生まない企業イメージ」を示しておくことも有効です。企業の理念や対応基準が普段から明確であればあるほど、緊急時に第三者(世論)が「この企業が理不尽な攻撃を受けている」と判断しやすくなり、擁護派が増えやすくなります。
価値観の変化に適応する
企業が炎上を防ぐには、SNS上で自社と異なる意見が多数を占めた場合、「これまでの自社の考え方が、世間から見たら非常識になっているのではないか」という危機感を持って対処する姿勢が不可欠です。
特に、以下のテーマに関する言動や表現は、批判の火種となりやすい傾向にあります。
- ・多様性・人権:人種、性別、思想信条、性的指向に関する不適切な表現
- ・社会貢献性:環境問題(サステナビリティ)や、地域社会への配慮が欠けているとみなされる行為
- ・公序良俗:芸能、芸術、スポーツといった公共性の高い分野に関する安易なパロディや発言
あわせて、SNSという公共の場での心構えを全社員で共有することも重要です。ある大手製菓メーカーのSNS責任者は、SNSという公共の場(公園)に「いさせていただく」という意識で振る舞いを考える「公園理論」を徹底しているといいます。こうした共通認識を持つことで、「何をすべきか」「何がダメなのか」の行動基準をそろえられます。
広告や公式SNSの投稿は、担当者だけで判断せず、多様な立場の社員や社外の専門家の視点でチェックする体制を設けることが有効です。
起用者・取引先のリスクを確認する
キャンセルカルチャーへの「巻き込まれ」を防ぐには、起用者や取引先のリスクを事前に把握しておくことが重要です。
- ・起用前の事前確認:タレントやインフルエンサーを起用する際は、過去の発言・投稿・作品を含めて事前にリスクを確認する
- ・契約上の取り決め:SNS利用のルールや、問題が発生した場合の契約解除条件を契約書に盛り込んでおく
- ・取引先の人権方針の確認:政府のガイドラインを参考に、取引先の人権尊重の取り組みを確認する
- ・判断基準の明確化:起用の継続・見直しを判断する基準と、判断する人・会議体をあらかじめ定めておく
ガイドライン整備と社員研修
社内のルール整備と教育は、キャンセルカルチャーの火種を減らす基本的な対策です。
- SNS運用ガイドライン:公式アカウントの投稿承認フローや、時事・社会問題に言及する際の判断基準を明文化する
- 個人アカウントの利用ガイドライン:社員・役員が個人アカウントで発信する際の注意点や禁止事項を定める
- 階層別の研修:アルバイト・若手社員から管理職・役員まで、階層ごとに異なるリスクを踏まえた研修を行う
- 危機管理マニュアル:自社の潜在的リスクの把握(リスク俯瞰図の作成)、危機発生時の対応者・協議者のアサイン、「こうなった場合にはこう対応する」という対応方法の見える化を行っておく
関連サービス:SNS運用ガイドライン作成サービス|株式会社クラッド
https://clad.inc/socialrisk/product/sns_rule/
関連サービス:企業向け炎上対策トレーニング(炎上防災訓練)|株式会社クラッド
https://clad.inc/socialrisk/product/enjo_company/
SNSモニタリング体制の構築
批判の兆候を早期に把握するために、SNSや掲示板、ニュースサイトなどを継続的に監視する体制を整えます。
- 監視キーワードの設定:自社名、商品・サービス名に加えて、経営者・役員名、起用中のタレント名、主要な取引先名なども監視対象とする
- 平時の論調の把握:平時の投稿量や論調を把握しておくことで、批判の急増など変化の兆しに気づきやすくなる
- 報告ルートの整備:検知した情報を誰に、どの順番で報告するかを決めておく
事案の検知から最大でも1時間以内に関係者に第一報が届き、関係者全員が状況を把握している状態が理想です。
キャンセルカルチャー発生時の企業対応
キャンセルカルチャーにつながる批判が発生した場合、初動の判断がその後の被害を大きく左右します。ここでは、発生直後に避けるべき行動と、とるべき対応の流れを整理します。
発生直後に避けるべき行動
- 投稿の削除やアカウントの非公開化:
隠蔽や逃げの姿勢と受け取られ、批判を拡大させるおそれがあります。削除を検討してよいのは、個人情報や権利侵害を含む場合など、残すことでさらに被害が生じる場合に限られます。 - 感情的な反論や個別ユーザーへの反撃:
ユーザーへの高圧的な返信や、批判した相手に直接連絡し、そのやり取りを公開する行為は、二次炎上を招きやすくなります。 - 担当者個人や個人アカウントでの対応:
役員や担当者が個人アカウントで釈明すると、企業の公式見解と受け取られ、混乱を招きます。 - 沈黙の長期化:事実確認に時間がかかる場合でも、「現在、事実確認中」といった状況を伝える一次情報を発信し、沈黙期間をなくすことが重要です。
- 閉鎖的な会見や断定的な説明:
参加者を限定した会見や、事実確認前の断定的な否定は、不信感を強める原因となります。 - 予約投稿・広告配信の放置:
通常の販促投稿や広告がそのまま配信されると、「事態を軽視している」と受け取られるおそれがあります。
初動対応の4ステップ
炎上の発生に対する初動対応は、以下の流れに沿って行います。
- 1.炎上事案の事実関係の調査
- 2.事実の場合の起因と要因の調査
- 3.影響対象者の把握と対応策の協議
- 4.対応決定後の速やかな実行(広報対応を含む)

図:初動対応の流れと、発生直後に避けるべき6つの行動
炎上が「事実無根(風評被害も含む)」の場合もあるため、まずは事実か否かの調査を速やかに行います。何が、いつ、どこで、誰によって投稿されたかを特定し、画面キャプチャや投稿のURLなどをデジタルデータとして証拠を保全します。事実でない場合は、「事実ではない」ことを迅速に公表することで、被害の拡大を防げる場合があります。
一方、事実であった場合は「対策の具体化」が重要です。現場だけで判断・対応せず、法的なリスクと広報上のリスクを各部門と共有したうえで、対応方針を決定します。
謝罪・見解の発信で押さえる点
謝罪や見解の発信で押さえるべき点は、次のとおりです。
- ・内容:事実関係、原因、影響を受けた人への謝罪、再発防止策、問い合わせ先を明記する
- ・発信場所:公式サイトと公式SNSの両方で発信する。SNSでは、経緯が伝わるよう、元の投稿へのリプライや引用の形で謝罪・訂正する
- ・修正時の明記:投稿や掲載内容を修正した場合は、修正した事実とその内容をあわせて示す
- ・関係者への個別説明:取引先、広告主、従業員など、影響を受ける関係者には個別に説明する
- ・会見の透明性:記者会見を開く場合は、参加者の不要な制限を避け、質問に誠実に答える
収束後の再発防止と信頼回復
批判が落ち着いた後も、信頼回復に向けた取り組みが必要です。
- ・原因分析と再発防止策の公表:必要に応じて第三者委員会などの外部の視点を取り入れ、原因と再発防止策を公表する
- ・社内ルールと研修の見直し:事案を踏まえてガイドラインや危機管理マニュアルを更新し、研修に反映する
- ・継続的なモニタリング:関連するニュースや節目のタイミングで話題が再燃することがあるため、収束後も監視を続ける
- ・検索結果、サジェストへの対策:ネガティブな情報が検索結果や検索候補に残り続ける場合は、オンライン上の評判対策を検討する
関連サービス:ソーシャルリスク対応コンサルティング
https://clad.inc/socialrisk/product/social_risk/
ネガティブ投稿を早期検知するSNS監視ツール
キャンセルカルチャーへの発展を防ぐには、批判の兆候を大きく拡散する前に把握し、初動に移ることが欠かせません。クラッドでは、自社の体制や目的に合わせて選べるSNSリスク監視サービスを提供しています
SNSリスク監視ツール「AI-mining」
クラッドが提供しているAI-mining(AIマイニング)は、ソーシャルリスク検知に特化した投稿監視・分析ツールです。
- ・AIによる高精度なリスク判定:
AIによる最新の自然言語処理技術を活用し、投稿内容の文脈を正確に読み取る高精度なリスク判定を実現しました。膨大なデータの中から、AIが自動で投稿を分類・分析します。 - ・幅広い監視対象:
国内最高水準となる2,000以上のメディアから、ネット上の膨大な投稿・記事をリアルタイムで監視。X(旧Twitter)・2chの公式データを取得しており、リスク投稿を正確に検知することができます。 - ・多機能ダッシュボード:
カスタマイズ性の高いダッシュボードで、SNS上の投稿状況や論調をリアルタイムに可視化。炎上リスクの兆候を見逃しません。 - ・炎上発生時のサポート:
炎上発生時には追加料金なしで経験豊富な専門コンサルタントが分析・助言、レポート作成など沈静化までサポートします。万一の際には、炎上保険による300万円保証も付帯しています(あいおいニッセイ同和損保)。
※炎上保険の適用には、契約プランに条件がございます。
関連サービス:SNSリスク監視ツール「AI-mining」
https://clad.inc/socialrisk/product/ai_mining/
有人監視「炎上リスクモニタリング」
監視業務をまるごと任せたい企業向けには、専門スタッフによる有人監視サービスを提供しています。
- 24時間365日、専門スタッフがリスク投稿を監視
- 画像・動画の監視、自社コミュニティサイトの監視にも対応
- バンコクに日本人オペレーター常駐の専用監視センターを完備
- リスク投稿発見時には、メール・電話による緊急連絡で早期対応を支援
自社の現状のリスクを把握したい企業向けに、無料のリスク診断も実施しています。
監視体制の構築から、ガイドライン作成、研修、発生時の対応支援まで、お気軽にご相談ください。
関連サービス:有人監視「炎上リスクモニタリング」
https://clad.inc/socialrisk/product/risk_monitoring/
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キャンセルカルチャーに関するQ&A
キャンセルカルチャーについて、企業の広報・リスク管理担当者が抱きやすい疑問をQ&A形式でまとめました。
キャンセルカルチャーと炎上は同じですか?
同じではありません。炎上は批判が集中する「状態」、キャンセルカルチャーは批判が不買や降板、契約解除などの「行動」に発展する動きを指します。炎上がキャンセルの入り口になることはありますが、すべての炎上がキャンセルに至るわけではありません。
日本でもキャンセルカルチャーは起きていますか?
起きています。過去の発言の掘り起こしによる辞任や、人権問題を理由とした広告起用の見直し、不十分な会見対応をきっかけとしたスポンサー離れなどが、国内でもキャンセルカルチャーとして論じられています。
過去の投稿もキャンセルの対象になりますか?
なる可能性があります。SNSの投稿や雑誌記事などはデジタル上に残り、起用の発表や就任などをきっかけに掘り起こされることがあります。社会の価値観が変化しているため、当時は問題視されなかった内容でも、現在の基準で批判される場合があります。
起用タレントが炎上したら企業はどうすべき?
まず事実関係と批判の論点を確認し、事前に定めた判断基準に沿って、起用の継続・一時停止・見直しを判断します。判断の結果にかかわらず、自社の考え方を説明できるようにしておくことが重要です。広告の差し止めなどを行う場合も、タレント本人への過度な非難につながらないよう、発信内容には配慮が求められます。
企業は批判に反論してもよいですか?
事実と異なる情報が拡散している場合は、根拠を示して冷静に訂正することが重要です。ただし、個別のユーザーへの感情的な反論や高圧的な返信は、二次炎上を招きやすいため避ける必要があります。発信は公式サイトや公式アカウントから、企業としての見解の形で行います。
社員の個人投稿でも企業が批判されますか?
批判される可能性があります。「個人の意見です」と明記していても、会社名や所属が特定されれば、企業への批判に波及することは避けられません。個人アカウントの利用に関するガイドラインの整備と、階層別の研修による周知が有効です。
キャンセルカルチャーの調査・論文・書籍
キャンセルカルチャーについて理解を深めるために、本記事で参照した主な調査データ、論文、書籍を紹介します。
調査データ
Americans and ‘Cancel Culture’(Pew Research Center、2021年)
2020年9月に米国の成人を対象に、「キャンセルカルチャー」という言葉の認知度と、その意味の捉え方を調査したレポートです。言葉の意味を「説明責任を問う行動」と捉える人と、「検閲」や「攻撃」と捉える人に分かれる実態を示しています。
https://www.pewresearch.org/internet/2021/05/19/americans-and-cancel-culture-where-some-see-calls-for-accountability-others-see-censorship-punishment/
令和5年版 情報通信白書「フィルターバブル、エコーチェンバー」(総務省、2023年)
SNSなどのアルゴリズムによって、利用者が似た意見にばかり触れやすくなる仕組みと、その社会的な影響を解説しています。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/nd123120.html
論文
Emotion shapes the diffusion of moralized content in social networks(Brady et al.、PNAS、2017年)
銃規制や同性婚などをめぐる約56万件の投稿を分析し、道徳的・感情的な語を含む投稿ほど拡散しやすいことを示した論文です。
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1618923114
How social learning amplifies moral outrage expression in online social networks(Brady et al.、Science Advances、2021年)
いいねやリポストなどの反応が、利用者の怒りの表明を強化する仕組みを、観察研究と実験によって検証した論文です。
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abe5641
Cancel Culture: Myth or Reality?(Pippa Norris、Political Studies、2023年)
100か国以上の政治学者約2,500人への調査をもとに、キャンセルカルチャーが神話か実態かを検証し、周囲の価値観と合わない人ほど発言を控える傾向を示した論文です。
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00323217211037023
書籍
『キャンセルカルチャー アメリカ、貶めあう社会』(前嶋和弘著、小学館、2022年)
アメリカ政治を専門とする著者が、人種、銃規制、同性婚、移民など、米国の「文化戦争」の論点を、キャンセルカルチャーを軸に解説しています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4093888442
『「キャンセル・カルチャー」パニック パニックを生み出す言説空間』(アドリアン・ダウプ著、藤崎剛人訳、青土社、2025年)
キャンセルカルチャーをめぐる言説がどのように生まれ、各国に広がったのかを分析した書籍です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4791777573
『ネット炎上の研究 誰があおり、どう対処するのか』(田中辰雄・山口真一著、勁草書房、2016年)
アンケート調査などの定量分析をもとに、炎上の発生件数、炎上参加者の人数や属性、社会としての対処法を示した書籍です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4326504226
『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』(ジョン・ロンソン著、夏目大訳、光文社新書、2017年)
SNS上での一つの投稿をきっかけに、激しい批判を受けて職や社会的地位を失った人々への取材をもとにしたルポルタージュです。
https://www.amazon.co.jp/dp/4334039723
まとめ
キャンセルカルチャーとは、問題視された言動を理由に、個人や企業への支持や取引を集団で取り下げる動きや風潮のことです。批判が集中する状態を指すSNS炎上とは異なり、不買、CM差し止め、契約解除などの具体的な行動に発展する点が特徴です。
価値観の変化、人間の心理、SNSのアルゴリズムが重なることで、キャンセルカルチャーはどの企業にも起こり得ます。また、起用したタレントや取引先の問題に巻き込まれる形でも発生します。リスクをゼロにすることはできませんが、価値観の変化への適応、起用者・取引先のリスク確認、ガイドライン整備と研修、SNSモニタリング体制の構築によって、発生の可能性と被害を抑えることは可能です。万一発生した場合は、削除や沈黙を避け、事実確認に基づく迅速かつ透明性のある初動対応が求められます。
この記事は、SNSリスク監視サービスなどのリスク対策サービスを25年以上支援している株式会社クラッドで、数多くの企業研修・SNSリスク対応の経験を持つ、SNSリスクコンサルタントが執筆しています。
ぜひお気軽にご相談ください。
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