SNS監視とは?意味と目的
SNS監視(SNSモニタリング)とは、X(旧Twitter)・Instagram・Facebook・YouTube・TikTokといったSNSや、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)などの掲示板・口コミサイトを対象に、自社や自社の商品・サービスに関する投稿をリアルタイムで収集・分析する取り組みのことです。
「ソーシャルメディア監視」「風評監視」「ソーシャルリスクモニタリング」とも呼ばれ、企業のレピュテーションマネジメント(評判管理)の中核を担う手法として定着しています。
スマートフォンの普及によって、誰もが瞬時に情報を発信・拡散できる時代になりました。企業にとって不都合な情報や従業員の不適切な行動が動画・画像とともにSNSに投稿されると、数時間のうちに数万〜数百万人の目に触れるケースも珍しくありません。
こうした炎上リスクに備えるため、SNS監視は現代の企業にとって必須のリスク管理施策になっています。
大企業にSNS監視が必要な理由
SNS監視の必要性は、企業の規模によって切実さが変わります。ここでは、大企業・上場企業がとくに監視を必要とする背景を、被害が広がりやすい理由、中小企業との炎上の違い、導入のきっかけ、得られるメリット、そして監視をしなかった場合に起きることという5つの角度から整理します。
上場企業ほど被害が広がる背景
大企業・上場企業は、知名度や取引先・株主・従業員の数が多いぶん、SNS上で言及される機会そのものが多く、炎上が発生した際の社会的影響も甚大です。株価下落、取引先からの信用低下、採用活動への悪影響、行政・監督官庁からの視線など、中小企業では起こりにくい規模の二次被害につながる可能性があります。
また、上場企業には金融商品取引法上の適時開示義務やコーポレートガバナンス・コードへの対応が求められており、「危機管理体制が整っているか」は投資家やステークホルダーからの評価にも直結します。SNS監視は、こうした企業の社会的責任(信頼性の証明)としての側面も持ち合わせています。
大企業と中小企業の炎上の違い
大企業と中小企業では、炎上の「起きやすさ」と「広がり方」に違いがあります。
- 拡散スピードと規模:
大企業は認知度が高いためフォロワー数・言及数が多く、一度火がつくとインフルエンサーやニュースメディアに取り上げられるスピードが速い傾向があります。
- 被害の連鎖範囲:
グループ会社・子会社・関連ブランドを多数抱える大企業では、ひとつのブランドで発生した炎上が親会社やグループ全体のイメージ低下に波及しやすいという特徴があります。
- 監視すべき対象の広さ:
多店舗展開や複数事業を持つ大企業は、本社アカウントだけでなく、各店舗・各ブランドの公式アカウント、従業員個人のアカウントなど、監視すべき範囲が中小企業よりはるかに広くなります。
- 中小企業の炎上要因:
一方、中小企業では、経営者個人の発言や、限られた人数のスタッフによる接客トラブル・不適切投稿が炎上の起点になりやすい傾向があります。
SNS監視を始めるきっかけ
企業がSNS監視の導入を検討し始める代表的なきっかけには、以下のようなものがあります。
- IPO(新規上場)準備:
IPO準備企業は、上場審査においてリスク管理体制・内部統制の整備状況を厳しく問われます。情報漏えいや炎上インシデントが上場審査期間中に発生すると、上場延期や審査への悪影響につながりかねないため、上場準備の一環としてSNS監視体制を整える企業が増えています。
- 同業界での炎上事案の発生:
同業他社で大規模な炎上が発生すると、「次は自社が標的になるかもしれない」という危機感から、業界横断的に監視体制の強化に動くケースが多く見られます。2023年に相次いだ飲食チェーンでの迷惑動画騒動のように、ひとつの事案をきっかけに業界全体で対策が広がる傾向があります。
- 自社での炎上・ヒヤリハットの経験:
実際に炎上を経験したり、発見が遅れて対応が後手に回った経験があると、次の被害を防ぐために監視体制の導入を急ぐ企業が多くなります。
SNS監視で得られるメリット
- 監視リソースの確保:
自社の広報・マーケティング担当者だけでSNSを24時間監視し続けることは現実的ではありません。専門の監視体制を持つことで、限られた人員でも網羅的な監視が可能になります。
- 監視の網羅性:
X・Instagram・YouTube・TikTok・5ちゃんねる・Googleマップ・口コミサイトなど、監視すべき媒体は多岐にわたります。専門サービスを活用すれば、自社だけでは目が届きにくい媒体まで幅広くカバーできます。
- 初動対応のスピード向上:
炎上は「投稿→インフルエンサーによる拡散→メディア報道」という段階を経て被害が拡大します。最初の段階で火種を発見できれば、その分だけ早く対応でき、被害の大きさを左右する初動対応のスピードを高められます。
監視をしない場合に起きるリスク
SNS監視を行わない場合、企業は自社に関するネガティブな投稿の存在に気づかないまま被害が拡大していくリスクを抱えることになります。担当者が偶然投稿を見つけたときにはすでに大規模拡散が始まっている、というケースも少なくありません。また、「自社への批判に気づいていなかったこと」自体が「危機管理体制が甘い」という新たな批判の対象になることもあります。夜間・休日に投稿が拡散しても気づけない体制のままでは、対応の遅れが被害をさらに拡大させる悪循環に陥りかねません。
データで見る大企業のSNSリスク
大企業がSNS監視に取り組む必要性は、公的機関や調査会社が公表しているデータからも裏づけられます。ここでは、企業側の備えの状況を示す「社内ルールの整備率」と、実際に起きているトラブルの量を示す「相談件数の推移」という2つの角度から現状を確認します。
社内ルールを整備した企業は半数
大企業と中小企業とでは、SNSリスクへの対応状況に明確な差があります。帝国データバンクが2026年5月に実施した調査(有効回答企業1,355社)によると、従業員のSNS投稿に関する社内ルールを「整備している」と回答した企業は全体の23.2%にとどまりましたが、企業規模別に見ると「大企業」では50.5%が「ルールがある」と回答したのに対し、「小規模企業」では9.8%と1割に届きませんでした。「ルールを設ける予定はない」と回答した企業も、大企業が17.2%にとどまるのに対し、小規模企業は43.0%と4割を超えています。
このデータからも、大企業・上場企業ほどSNSに関するリスク管理体制の整備が進んでいる一方、企業規模による対応格差が依然として大きいことがわかります。
出典:株式会社帝国データバンク「SNS投稿に関する社内ルールの整備状況アンケート(2026年5月)」
誹謗中傷の相談は高止まりが続く
企業側の備えが進む一方で、ネット上のトラブルそのものは高い水準で推移しています。総務省が運営を委託する違法・有害情報相談センターに寄せられた相談件数は、令和6年度(2024年度)も6,000件を超え、受付を開始した平成22年度の1,337件から4倍以上に増えた状態が続いています。相談内容の内訳では「インターネット上の情報を削除したい」が最も多く、次いで「発信者の特定方法を知りたい」が挙がっており、名誉や信用を毀損する情報への対応に悩むケースが大半を占めています。
また、総務省の情報通信白書によると、SNS利用者を対象とした調査では約半数(50.9%)が誹謗中傷にあたる投稿を目撃したことがあると回答しています。ネガティブな投稿に触れること自体が、すでに日常的な出来事になっているといえます。
こうしたデータからも、SNS炎上は「一部の企業だけが遭遇する特殊な事案」ではなく、規模や業種を問わず日常的に発生しうるリスクであることが読み取れます。
出典:総務省「令和6年度 インターネット上の違法・有害情報対応 相談業務等の請負 報告書(概要版)」
https://www.soumu.go.jp/main_content/001009571.pdf
出典:総務省「令和5年版 情報通信白書」違法・有害情報の流通
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/nd123130.html
大企業で実際に起きたSNS炎上事例
SNSリスクは、その性質によっていくつかのカテゴリに分類できます。ここでは、代表的な4つのカテゴリ(迷惑行為の拡散、従業員による情報漏えい、誹謗中傷・風評被害、公式アカウントの不適切発言)ごとに、実際に大企業で発生した事例を紹介します。
迷惑動画の拡散で株価が急落
2023年1月、大手飲食チェーンの店舗で、来店客の少年が醤油差しの注ぎ口や未使用の湯飲みをなめるなどの迷惑行為を行い、その様子を撮影した動画がSNSで拡散しました。動画は1月末にかけて急速に拡散し、運営会社の親会社の時価総額は1月30〜31日の2日間で160億円以上下落したと報じられています。運営会社は少年に対して約6,700万円の損害賠償を求めて提訴し、同年7月に調停が成立しました。
自社に落ち度がなくても、来店客の行為ひとつで企業価値が大きく毀損されうることを示した事例です。監視によって拡散の初期段階で把握できていれば、公式声明の発表や店舗対応の判断を前倒しできた可能性があります。
出典:日本経済新聞(2023年8月)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF0164X0R00C23A8000000/
従業員の投稿による情報漏えい
取引先の自動車メーカーの工場内で撮影した未発表の新型車の写真を、自動車部品メーカーの元従業員がX(旧Twitter)に投稿した事案では、発表前の車両画像が営業秘密に該当するとして、不正競争防止法違反(営業秘密の不正開示)と偽計業務妨害の疑いで書類送検されたと報じられています。不正競争防止法では、営業秘密を不正に取得・使用・開示した場合、10年以下の拘禁刑もしくは2,000万円以下の罰金、またはその両方が科されると定められています。
この事例のように、従業員個人が悪意なく投稿した「ちょっとした自慢話」が、企業にとって重大な情報漏えいインシデントに発展するケースは少なくありません。自社の従業員だけでなく、取引先や委託先のスタッフによる投稿もリスクの対象になる点は、サプライチェーンの広い大企業ほど注意が必要です。
出典:経済産業省「不正競争防止法・営業秘密」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/index.html
事実無根の風評による信用低下
事実無根の情報や悪意ある書き込みが拡散され、企業のブランドイメージや株価に影響を及ぼすケースです。SNSは拡散性が高いプラットフォームであるうえ、ネガティブな情報はポジティブな情報より注目されやすい性質があるため、一度広まると収束が難しく、長期的に企業のブランド価値を損なうリスクがあります。事実無根の風評であっても、上場企業のブランドに傷がつけば株主からの批判や株価低下につながる可能性があるため、早期発見と正確な事実確認に基づく対応が欠かせません。
公式アカウントの返信が炎上
2024年12月、靴下ブランドを展開するアパレル企業の公式X(旧Twitter)アカウントが、ユーザーの投稿に対して高圧的とも取れる返信を行ったことで批判が殺到しました。同社は「従業員のSNSにおける不適切投稿に関するお詫び」を公式に発表し、ソーシャルメディアに関するガイドラインの遵守徹底と社員教育による再発防止に努めるとしています。
担当者個人の感情が公式発信に表れてしまうケースは、投稿前の確認体制やガイドラインの運用が整っていれば防げる可能性があります。公式アカウントは企業の「顔」であり、返信ひとつが企業姿勢として受け取られる点に注意が必要です。
出典:J-CASTニュース(2024年12月16日)
https://www.j-cast.com/2024/12/16499521.html
SNS監視の方法と監視できる範囲
SNS監視といっても、誰がどこまで見るのかはサービスによって幅があります。ここでは、監視体制の3つの選択肢、検知できるリスク投稿の種類、監視対象となる媒体を確認したうえで、炎上の予兆・写真や動画・なりすましアカウントをそれぞれどう監視しているのかを見ていきます。
監視体制は3つに分けられる
SNS監視の体制は、「誰が監視するのか」という観点で3つに分けられます。AI監視ツールに任せる方法、自社の担当者が目視で監視する方法、専門事業者に有人監視を委託する方法の3つです。
- ツール型(AI監視ツール):
登録したキーワードをもとに、AIが自動で投稿を収集・分類します。24時間365日、大量の投稿をリアルタイムで処理でき、人件費を抑えられる点が強みです。一方で、隠語や新語、婉曲表現の判断は苦手なため、検知した投稿の最終的な判断と対応は自社で担う前提になります。
- 有人監視型(自社運用):
広報やリスク管理の担当者が、自らSNSを巡回して確認します。自社の事業や業界特有の文脈を理解した人間が見るため、判断の精度は高くなります。ただし、夜間・休日を含む24時間体制を自社人員だけで維持することは現実的ではなく、担当者の負荷と業務の属人化が課題になりやすい方式です。
- 有人監視型(監視代行サービス):
専門オペレーターによる目視監視を、外部の事業者に委託します。24時間365日の体制を自社で抱えることなく確保でき、文脈やニュアンスを踏まえた判断も期待できます。多くの場合、AIによる一次抽出と人による二次確認を組み合わせて運用されるため、ツール型の網羅性と有人監視の精度を両立しやすい方式です。
この3つは排他的な選択肢ではありません。AI監視ツールを自社で運用しつつ、リスクの高い媒体や繁忙期だけ監視代行を組み合わせるといった設計も可能です。それぞれの向き不向きについては、後述の「監視ツールと有人監視代行の違い」で詳しく比較します。
検知できるリスク投稿の種類
SNS監視によって検知できる代表的なリスク投稿には、以下のようなものがあります。
- 商品・サービスへのクレームや苦情
- 事実無根の誹謗中傷・風評被害につながる投稿
- 従業員・アルバイトによる不適切投稿(いわゆる「バイトテロ」)
- 顧客による迷惑行為の投稿・拡散
- 情報漏えいにつながる投稿(未公開の新商品情報や取引先情報など)
- なりすまし・フィッシング詐欺を目的とした偽アカウントの投稿
監視対象となるSNS・サイト
炎上リスクの高さはプラットフォームによって異なります。主な監視対象は以下のとおりです。
- X(旧Twitter):
リアルタイム性の高さと「リポスト」機能による拡散力から、炎上の主戦場になりやすい媒体です。 - Instagram・TikTok:
画像・動画中心のため視覚的なインパクトが強く、バイトテロ系の動画の投稿場所として機能することが多くなっています。 - Facebook:
実名制のため、具体的な不満や組織的な批判が広がりやすい傾向があります。 - YouTube:
動画への批判的なコメントが集中したり、炎上動画をまとめた「切り抜き」チャンネルが二次拡散を促すこともあります。 - 5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)など掲示板系:
匿名性が高く、誹謗中傷や風評が集積しやすい「炎上の震源地」になりやすい媒体です。 - Googleマップ・各種口コミサイト:
低評価や誹謗中傷コメントが蓄積し、採用活動や集客に影響することがあります。 - ニュースサイト・まとめサイト:
SNS上の炎上情報がまとめられ、検索結果の上位に残り続けるリスクがあります。
炎上の予兆を検知する仕組み
炎上の予兆は、多くの場合「特定のキーワードやハッシュタグに関する言及数の急増」という形で現れます。監視サービスでは、あらかじめ自社名・商品名・関連ワードを登録し、言及数の推移や急上昇(バースト)を検知することで、大規模拡散に至る前の早い段階でリスクの火種を発見します。あわせて、投稿内容をポジティブ・ネガティブ・ニュートラルに自動分類するネガポジ判定を組み合わせることで、単なる話題化と炎上の予兆とを見分けやすくしています。
写真や動画を監視する方法
炎上の火種は、テキストだけでなく写真・動画の形で投稿されるケースも少なくありません。バイトテロや異物混入といった炎上は、画像・動画つきで拡散することがほとんどです。監視サービスでは、画像・動画を含む投稿もあわせて収集し、有人監視のオペレーターが目視で内容を確認することで、テキストの検索だけでは拾いきれない視覚的なリスクを検知しています。AIによる画像解析を組み合わせ、不適切な内容が含まれる可能性のある投稿を優先的に人の目でチェックする仕組みを採用しているサービスもあります。
なりすましアカウントの監視
企業の公式アカウントに似せた偽アカウントが、キャンペーン詐欺や誤情報の拡散、フィッシング詐欺などに悪用されるケースも増えています。通常のリスク投稿の監視だけでは、なりすましアカウントそのものの存在に気づけないことが多いため、通常のリスク監視とは別のオペレーションとして体制を整えておくことが望ましいといえます。
具体的には、X・Instagram・Facebookなどの主要SNSを定期的に巡回し、企業名・ブランド名・ロゴを不正に使用しているアカウントを発見した場合、各プラットフォームの報告機能を通じて停止申請を行います。あわせて、公式アカウントから「なりすましアカウントが存在する」旨を告知し、ユーザーに注意を促す対応も必要です。発見が遅れるほど、偽アカウントによる被害者(フォロワーやユーザー)が増え、企業の信用問題に発展するリスクが高まります。
監視ツールと有人監視代行の違い
SNS監視サービスを比較する際に、まず判断が必要になるのが「ツール型」と「有人監視型」のどちらを軸にするかです。ここでは両者の特徴を整理したうえで、監視ツールに備わっている機能、AIの進化によって変わった点、そして24時間365日体制が必要とされる理由を確認します。
ツール型と有人監視型の特徴
ツール型は、キーワードをもとにAIが自動で投稿を収集・分類する仕組みで、24時間365日、大量の投稿をリアルタイムで処理できる点が強みです。人件費が抑えられ、比較的低コストで導入できる一方、設定したキーワード以外の投稿は拾えず、文脈やニュアンスの誤判定が起きやすいという弱点があります。
有人監視代行サービスは、専門のオペレーターが目視でSNSを監視し、隠語や業界特有の表現、行間のニュアンスまで踏まえて高精度にリスクを判断します。AIでは判別が難しい微妙な文脈や、ログインが必要なクローズドなSNSにも対応できる点が特長ですが、その分コストはツール型より高くなる傾向があります。近年の監視代行サービスは、AIによる一次スクリーニングと専門オペレーターによる二次確認を組み合わせて運用されるのが一般的です。ツールの網羅性と有人監視の精度を両立できるため、自社でツールを運用する場合と比べて、担当者の一次確認の負担を大きく減らせます。
SNS監視ツールの主な機能
一般的なSNS監視ツールには、以下のような機能が搭載されています。
- ・ダッシュボード機能:
監視対象媒体ごとの言及数の推移や、ネガティブ・ポジティブの比率などを一覧で確認できる管理画面 - ・レポート機能:
日次・週次・月次でのリスク投稿の傾向をまとめたレポートを自動生成する機能 - ・アラート機能:
危険度の高い投稿が検知された際に、担当者へリアルタイムでメールやチャットツールを通じて通知する機能
これらの機能により、担当者は膨大な投稿をひとつずつ確認することなく、リスクの高い投稿から優先的に対応できるようになります。
AI監視ツールで変わったこと
従来型のSNS監視ツールは、登録したキーワードに完全一致・部分一致する投稿を機械的に抽出する仕組みが中心で、ネガティブ・ポジティブの判定精度にも限界がありました。
近年のAI監視ツールは、自然言語処理技術の進化によって、投稿の文脈やニュアンスまで踏まえたリスク判定が可能になっています。単語単位のマッチングではなく、文章全体の意味や感情の傾向を解析することで、誤検知(本来リスクではない投稿をリスクと判定してしまうこと)や見落としを減らせる点が、従来型ツールとの大きな違いです。あわせて、投稿内容を自動でカテゴリー分類する機能を備えたツールも登場しており、担当者の一次確認の負担軽減にもつながっています。
24時間365日体制が必要な理由
炎上は曜日や時間帯を選ばず発生します。むしろ、担当者が対応しにくい深夜や休日にこそ、投稿の拡散が加速するケースも少なくありません。担当者が出社する平日の日中しか監視していない場合、夜間や週末に発生した炎上の初動対応が翌営業日までずれ込み、被害が拡大してから気づくという事態になりかねません。
特にグローバルに事業を展開する大企業や、24時間営業の店舗を抱える企業にとって、24時間365日体制の監視は「あれば安心」ではなく「なければ危険」な水準の必須要件になりつつあります。
選び方と導入・運用までの流れ
自社に合うサービスを選ぶには、大企業ならではの要件を整理したうえで比較軸を持つことが欠かせません。ここでは、大企業・上場企業が求める要件と比較検討時のポイントを確認したうえで、導入から運用までのステップと、検知したリスクを社内のどこへ共有すべきかを整理します。
大企業・上場企業が求める要件
大企業・上場企業がSNS監視サービスに求める要件は、中小企業とは異なる水準になることが多くあります。
具体的には、以下のようなポイントが重視される傾向があります。
- ・本社アカウントだけでなく、グループ会社・複数ブランド・多店舗を横断して監視できること
- ・24時間365日、深夜・休日を含めて途切れなく監視できる体制があること
- ・検知から報告までのスピードが速く、経営層・広報部門へのエスカレーションが迅速であること
- ・炎上発生時のコンサルティングや対応サポートまで一気通貫でカバーしていること
- ・個人情報保護法など関連法令を遵守した運用体制が整っていること
比較検討で確認したいポイント
SNS監視サービスを比較・検討する際は、以下の観点を軸に選定することをおすすめします。
- 監視対象プラットフォームの網羅性:
X・Instagram・YouTube・TikTok・5ちゃんねる・Googleマップ・口コミサイトなど、自社が重視する媒体をカバーしているか - 監視体制のタイプ:
ツール型・自社運用・監視代行のうち、自社のリスクレベルや人員体制、予算に合うものを選ぶ - 検知スピードとアラート通知の仕組み:
炎上への対応は最初の数時間が重要とされるため、リスク投稿検知から担当者への通知までの速さを確認する - 炎上発生時のサポート体制:
検知・通知だけでなく、初動対応コンサルティングや沈静化サポート、PR支援まで含まれるか - レポーティングの内容と頻度:
日次・月次レポートの内容や、ダッシュボードの見やすさ - 炎上保険の有無:
炎上発生時の損害を補償する保険が付帯しているかどうかも、経済的リスクに備えるうえで確認すべきポイントです
導入・運用までの6ステップ
一般的な導入から運用までの流れは、以下のようなステップで進みます。
- STEP 1|現状把握・課題整理:
自社や自社ブランドに関する投稿の現状を把握し、想定されるリスクを洗い出す - STEP 2|監視対象・キーワードの設計:
企業名・商品名・ブランド名・関連ワード、監視対象とする媒体を設計する - STEP 3|サービス・監視体制の選定:
ツール型・自社運用・監視代行の中から、自社のリスクレベルや予算に応じた体制を選定する - STEP 4|社内対応フローの整備:
リスク投稿を検知した際のエスカレーション基準、担当部門、初動対応の役割分担を事前に決めておく - STEP 5|本稼働・レポーティング運用:
日次・月次レポートを確認しながら、投稿傾向の変化やリスクの高まりをモニタリングする - STEP 6|定期的な見直し・訓練:
炎上事例を題材にした訓練を実施し、対応フローが形骸化しないよう継続的に見直す
レポートを共有すべき部署
SNS監視で得られたレポートは、広報部門だけで抱え込むのではなく、リスクの内容に応じて複数部署へ共有する体制を整えることが重要です。一般的な共有先の例は以下のとおりです。
- 広報・PR部門:
日常的なモニタリングレポートの一次受け皿として、傾向分析やメディア対応を担当 - 法務部門:
誹謗中傷や情報漏えいなど、法的措置の検討が必要なリスクが検知された場合に連携 - 経営層(役員・危機管理担当役員):
炎上の兆候が強い投稿や、企業の信用に関わる重大なリスクが検知された場合に速やかにエスカレーション - カスタマーサポート・お客様相談室:
クレーム系の投稿が検知された場合の個別対応窓口 - 内部監査・コンプライアンス部門:
従業員の不適切投稿など、社内規律に関わる事案の場合
上場企業においては、重大なリスクが投資家判断に影響を及ぼす可能性がある場合、IR部門とも連携し、適時開示の要否を検討する体制を整えておくことも重要です。
リスク検知後の対応と予防策
監視体制が整っても、リスク投稿を見つけたあとの動き方が決まっていなければ被害は抑えられません。ここでは、投稿の種類ごとに対応をどう切り替えるかと、同じ事態を繰り返さないための予防策を整理します。
投稿の種類別に対応を切り替える
リスク投稿を検知した後は、投稿の分類に応じて対応方針を切り替えることが重要です。
- クレーム・不満系投稿:
事実確認のうえ、真実に基づくクレームであれば誠実に謝罪・改善を表明し、個別対応が必要な場合はDMや電話サポートへ誘導する - 誹謗中傷・風評被害系投稿:
事実でないことを確認したうえで法務部門・顧問弁護士と連携し、削除依頼や発信者情報開示請求を検討する - 従業員・アルバイトの不適切投稿:
投稿者・事実関係を最速で特定し、削除要請と当該部門への緊急対応を行うとともに、公式声明で事実確認中であることを速やかに公表する - 炎上の初期段階:
まず「今すぐ対応すべきか」「様子見でよいか」を判断し、危機対応本部を立ち上げて社内で対応方針を統一する - なりすまし・フィッシング系投稿:発見次第、プラットフォームの報告機能を通じて停止申請を行い、公式アカウントから注意喚起を行う
とくに誹謗中傷・風評被害系の投稿は、感情的に反応すると二次炎上を招くリスクがあるため注意が必要です。まず投稿内容が事実に基づくものかを精査し、事実でないことを確認したうえで法務部門・顧問弁護士と連携するのが基本の流れになります。悪質な投稿についてはプロバイダへの発信者情報開示請求など法的な削除依頼を検討し、公式声明で事実関係を否定するかどうかは、反応すること自体が拡散を助長するリスクも踏まえて慎重に判断します。あわせて、継続的な監視によって同様の投稿が増加していないかを追跡します。
炎上を繰り返さないための予防策
炎上を一度経験した企業や、リスク投稿を検知した企業が取り組むべき予防策としては、以下のような施策が挙げられます。
- SNS運用ガイドラインの整備・改訂と、従業員への周知徹底
- 公式アカウントの投稿を複数人でチェックする事前承認フローの構築
- 炎上事例を題材にした疑似体験型の研修(炎上防災訓練)の定期実施
- 謝罪文・声明文のテンプレートをあらかじめ準備しておくこと
- エスカレーション基準・担当部門・発信媒体のルールを明文化し、定期的に見直すこと
大企業向けの監視サービスと導入事例
ここでは、大企業・上場企業向けに提供しているSNS監視サービスの内容と、実際にご導入いただいている企業の事例を紹介します。
AI監視ツールと有人監視代行
クラッド(旧リリーフサイン)では、大企業・上場企業向けに以下のようなSNS監視サービスを提供しています。
AI-mining(AIマイニング)は、X・Instagram・YouTube・5ちゃんねる・Googleマップ・口コミサイトなど2,000サイト以上を対象とするAI監視ツールです。炎上発生時には、専門コンサルタントによる沈静化サポートが追加費用なしで受けられ、上限300万円の「炎上時保険」が標準で付帯している点が特長です。
炎上対策・風評被害 有人監視代行サービスは、バンコクに設置した専用監視センター(日本人オペレーター常駐)による24時間365日体制の有人監視サービスです。国内拠点のみで運営するサービスと比べてコストを抑えながら、画像や動画を含めた文脈やニュアンスを踏まえた高精度な監視を実現しています。
複数のブランドや店舗、グループ会社を抱える企業では、ブランド・企業ごとにキーワードや監視対象を設計したうえで、レポートを一元的に集約できる体制を整えることで、グループ全体のリスクを俯瞰しながらSNS監視・運用することが可能になります。
出典:株式会社クラッド「SNS監視とは?概要、注意点、監視サービス13選」
https://clad.inc/socialrisk/column/260330
ネスレ日本株式会社様
「ネスカフェ」「キットカット」などのブランドを展開するネスレ日本株式会社様は、他社サービスからの切り替えとしてクラッド(旧リリーフサイン)の有人監視代行サービス「炎上リスクモニタリング」を導入し、人の目による監視と定期的なリスクワードのすり合わせによって、SNS上のわかりにくいリスクを早期に検知する体制を運用しています。
- 導入前の課題:
オウンドメディアやSNS公式アカウントを開設した当初から、ネット上のネガティブな投稿を想定したモニタリングを実施しており、当時は他社のサービスを利用していました。
- 導入した対策:
バンコクの監視センター(日本人オペレーター)による24時間365日のリスク専門チームによる監視代行サービスの実施。新規キャンペーンごとに変わるリスクワードについて、定期的にリスク認識のすり合わせを行っています。
- 導入後の評価:
導入の決め手はコスト面の安さと、柔軟に対応するフレキシビリティ。モニタリングツールの自動化は各社とも進んでいるものの、テキストマイニングやAI抽出だけでは不安が残ったため、最終的には人の目で監視できるサービスが必要だと評価しています。
SNS上の不満に注意を払っていないこと自体が批判や炎上につながるため、顧客から指摘されて気づくようでは遅い、というのが同社の考え方です。
出典:株式会社クラッド|導入事例「ネスレ日本株式会社様」
https://clad.inc/socialrisk/case/nestle/
ニップン株式会社様
製粉を基盤に食品・冷凍食品などの事業を展開するニップン株式会社様は、SNSリスクモニタリングツール・SNSリスク対策研修・SNSガイドラインの3つを導入し、「迷ったら事前に確認する」という相談の習慣を全社に定着させました。
- 導入前の課題:
2022年春にInstagramとX(旧Twitter)の運用を開始し、フォロワーも順調に増えていた一方で、社内には万が一の際に事態を収束させるノウハウがありませんでした。投稿のチェックは行っていたものの、膨大な情報をすべて網羅するには限界があり、第三者から投稿内容について指摘を受けた経験もあったといいます。
- 導入した対策:
24時間365日のリスクモニタリングでSNS上の投稿を検知する体制構築と同時に、炎上の火種そのものを作らない「予防」として、グループ会社を含む約300名を対象にSNSリスク対策研修を実施。あわせてSNSリスク対策のガイドラインを整備しました。研修では同じ食に関わる業界で実際に起きた炎上事例を題材に、自社が投稿しなくても第三者の炎上に巻き込まれるリスクがあることを伝えています。
- 導入後の評価:
研修の満足度は90%を超え、当初は懐疑的だった役員からも評価を得ています。SNSの企画・投稿に加えて、取引先とのSNS上の取り組みについても事前相談が寄せられるようになり、ガイドラインに沿って実施の可否を判断できるようになりました。
導入の決め手は、ツールでは解決できない部分も包み隠さず伝える姿勢と、専門的な知見を持たない自社に同じ目線で伴走してくれるパートナーシップだったといいます。同社の広報部担当者は、SNSリスク対策を「企業の健康保険」にたとえ、炎上が全身に広がる前に食い止める早期発見・早期治療の重要性を挙げています。
出典:株式会社クラッド|導入事例「株式会社ニップン様」
https://clad.inc/socialrisk/case/nippn
SNS監視で注意すべき法令とルール
SNS監視は企業を守るための重要な手段ですが、運用にあたってはいくつかの法令・ガイドラインを踏まえる必要があります。
監視の範囲、従業員への周知、法的対応の前提となる知識の3点は、体制づくりの段階で押さえておきましょう。
- 監視対象は公開情報に限定する:
非公開アカウント(鍵アカウント)や限定公開投稿は監視対象としないことが基本です。
- 個人情報保護法への配慮:
個人情報保護委員会が公開する「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&Aでは、従業者を対象とするモニタリングを実施する際、あらかじめ目的を特定して社内規程に定め従業者に明示すること、実施の責任者・権限を定めること、あらかじめ定めたルールに従って適正に運用されているか確認することなどが留意事項として示されています。重要事項を定める際は、あらかじめ労働組合等に通知し、必要に応じて協議することが望ましいともされています。
- 情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)の理解:
誹謗中傷など権利侵害の投稿に対して、プロバイダの損害賠償責任の範囲や、発信者情報開示請求の手続きなどを定めた法律です。悪質な投稿への法的対応を検討する際の基礎知識として押さえておく必要があります。
- 従業員への周知:
SNSガイドラインや就業規則で「業務に関連する投稿は公開情報として取り扱う」旨をあらかじめ周知したうえで監視を行うことが重要です。
出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/faq/APPI_QA/
出典:総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html
まとめ
ここまで、SNS監視の基礎知識から、大企業・上場企業が取り組むべき理由、監視方法、炎上事例、サービスの選び方、法令面の注意点までを解説しました。SNS監視は「炎上してから」ではなく「炎上する前に」始めるべきリスク管理施策です。自社の規模やリスク特性に合った監視体制の構築をご検討ください。
当社クラッドは、サービス開始以来25年以上にわたり、1,500社以上の企業のSNS炎上対策・ソーシャルリスク管理を支援してきました。
SNSリスク対策・レピュテーション対策について、「何から始めればよいかわからない」「自社の対策状況を客観的に評価してほしい」という方は、お気軽にご相談ください。
お問合せフォームはこちら
- この記事を読んだ人はこんなページを読んでいます。


